めっき・塗料の密着性試験とは?主な目的や試験の種類・方法について

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スマートフォンを長く使っていると、角の表面が剥げてしまうことがあります。見た目が悪くなり、買い替えを検討し始める方は多いのではないでしょうか?塗料やめっきが剥がれる様子は、ステンレス製の水筒や指輪など、金属製品ではよく見られるものです。

今回ご紹介する密着性試験は、金属製品の表面に施されためっきや塗料の剥がれにくさを調べる試験です。試験方法の中には誰でもできるような簡単な試験もあります。そして、めっきならではの難しさもあるので、併せてご紹介していきます。

密着性試験とは?

密着性試験は、材料や製品の表面にある薄膜の機械的性質(付着力、摩擦・摩耗、引張強さなど)を調べる試験です。主に、金属製品めっきの密着性・付着性(剥がれにくさ)を調べていきます。「めっきが剥がれる」という慣用句がありますが、実際のめっきは、そう簡単に剥がれてしまっては困るものです。

めっきは素材の耐久性を守る重要な技術です。めっきが剥がれてしまうと、見た目の変化だけではなく、素材の耐久性が低下しやすくなり、さまざまな不具合が起こりやすくなります。製品によっては全く機能しなくなる場合もあるため、密着性試験は非常に重要な試験です。

対象を曲げたり、テープを貼って剥がすなど、誰でも簡単にできる試験があるのが特徴です。ただし、性質上、定量的(数値・数量で表せる)評価が難しく、大半が定性的(数値・数量で表せない)試験であることが大きな特徴です。

なぜ塗装やめっきをするのか?塗装やめっきをする3つの理由

そもそも、めっきとは、金属を始めとしてプラスチックやセラミックス、ガラス、繊維などの表面に、金や銀、ニッケル、クロムなどの薄い金属膜を密着させることです。金属にするイメージが多いと思いますが、実はさまざまな材料に施されています。

塗装やめっきをする大きな目的は、「見た目を良くするため」「サビにくくするため」「さまざまな機能を加えるため」の3つです。

見た目を良くするため(装飾性)

メダル
自動車の外装やインテリア、家電製品の外装やアクセサリー、メダルなどに使われます。

サビにくくするため(耐食性)

錆びたブランコ
金属素材が雨風にさらされると、サビが発生することがあります。錆びてしまうと見た目が悪くなるだけでなく、金属が脆くなり耐久性が下がってしまいます。ブランコのような手が触れる部分が錆びてしまうと手や指をケガしてしまうこともあります。塗装を行い、素材の表面に膜をつくることで錆から素材を守り、安全に利用できるようになります。自動車の外装やガードレール、建築資材や機械部品などに使われます。

さまざまな機能を加えるため(機能性)

電子部品
実は、めっきをすると素材に機能を与えることができます。電気を通しやすくなったり(導電性)、熱に強くなったり(耐熱性)、さまざまな機能を付与できます。パソコンやスマートフォンなどに使われる電子部品は、めっきがないと動かすことさえできません。目にする場面は少ないですが、現代の情報社会を支える必要不可欠な技術です。機能めっきの技術はミクロン(100万分の1mm)やナノ(10億分の1mm)の世界にまで及び、ここまで来ると求められる技術や精度も格段に上がります。

密着性試験を実施する目的

密着性試験の目的は、塗装やメッキの強度から材料や製品の安全性や耐久性を確保することです。塗装やめっきが剥がれると防錆などのさまざまな機能が失われるため、材料や製品の性能にも影響します。密着性試験を実施することで、基材を守る性能を持っているかどうかを確かめることができます。

また、めっきの密着強度だけでなく、剥がれ方も重要です。めっき皮膜の方が剥がれるか、素材の方まで剥がれるのか、あるいはめっき皮膜と素材の境界(界面)で剥がれるかで、めっき加工に問題がないかを調べることができます。

めっきの密着強度や剥がれ方を把握することで、めっきの性能やめっき加工の良し悪しを判断できます。

密着性試験の対象となる主な製品

密着性試験の対象は、めっき加工した部品や製品です。

前述した通り、密着性試験のメインは金属製品です。金や銀、アルミなどによって施されためっきの密着性を調べていきます。高温や衝撃など、過酷な環境で使用されるめっき製品では必要不可欠の試験です。

金属だけでなく、プラスチックやセラミックスも対象になることがあります。たとえば家電製品やノートパソコンに使用されている樹脂はめっきを施されることがあります。セラミックスは耐食性、耐熱性が良いため電子部品などに多く用いられています。

スマホケース
日常生活では、剥がれた時にしか意識しない方も多いかもしれません。しかし、実は社会のあらゆるフィールドでめっき技術が利用されているのです。

密着性試験(めっき)の主な試験方法について

密着性試験の多くは、数値化できない定性的な試験です。これはめっきの性質上、剥がれにくさを数値化するのが難しいからです。後述する引張試験では定量的な評価が可能ですが、すべての対象で実施できるわけではありません。

試験方法については、個々の製品に適した試験法を工夫する必要があります。密着性試験の実施を検討されている方は検査会社へお問い合わせください。

摩擦試験

直径6mmで先が半球状になった鋼棒を使って、めっき面の6c㎡を1秒2~5回の速さで約15秒間こすります。密着性が悪い場合はめっきが膨れたり剥離が生じます。ニッケルやクロムなどの比較的硬い金属で、20μm以内の薄いめっきに使用します。

テープ試験(JIS Z 1522)

JISで定められたセロハンテープをめっき面に貼り付け、10秒経ったらテープが切れない程度に一気に引き剥がしてめっきの剥離を調べます。子どもでもできるような非常にシンプルな方法ですが、JIS規格に規定されているれっきとした試験です。

厳しくする場合は刃物でめっき面を1mmの升目に切りつけた状態で実施します。貴金属めっきなどの比較的薄いめっきには適していますが、硬く厚付けのめっきには向きません。

やすり試験

対象をやすりで削ってめっきの密着性を調べる試験です。やすりはJIS B 4703又はJIS B 4704で規定されている平形で中目のものを使用します。対象の断面または端面を、素地の方向からめっき面に対して45°の角度でやすりをかけていきます。こちらもテープ試験と同様、比較的簡単な試験です。ただし、クロムやニッケルなど、やすりより硬いものには適しません。

熱衝撃試験

温度サイクル試験器

引用:気槽式温度サイクル試験器 WINTECH NEO | 信頼性試験/環境試験のETAC
対象を指定の温度まで加熱し、一定時間保持したら、すぐに室温の水の中に入れて冷やします。急激な温度変化によってめっきのふくれや剥離が起こるかどうかを調べます。試験温度は素地とめっき金属の種類によって指定されています。水中に入れずに常温まで放冷させる場合は「加熱試験」になります。高温になる使用環境などで使用されるめっき製品で実施します。

曲げ試験

対象を万力で挟んだら、対象を90°に曲げます。反対側にも曲げていき、指定した回数または素材が破壊するまで繰り返します。試験箇所は目視で観察し、ふくれや剥離が明らかな場合は密着不良とみなされます。厚さ2mm以内のめっき製品または試験片で実施します。

引張試験

引張試験機
対象の両面をそれぞれ接着剤で引張治具に固定します。引張試験機で引張治具を介してめっき面・素地面に対して垂直に引っ張り、めっきが剥離した時の強度をチェックします。剥離した際の強度が引張試験機で計測できるため、密着性を定量化することができます。

プラスチックめっきやセラミックスめっきなど、金属以外の素材で必要な試験です。ただし、接着剤の強度以上の荷重をかけることはできません。JISに規定されている試験ではありませんが、測定が簡単で定量的な評価ができる試験のため、多く実施されている試験です。

めっきの性能を確認する密着性試験

めっきは見た目を綺麗にするだけでなく、防錆を始めとするさまざまな機能を素材に与えることができる技術です。家電製品やパソコンなど幅広い製品で使用されるため、私たちの日常生活で無くてはならないものです。密着性試験はめっきの性能やめっき加工の良し悪しを判断し、部品や製品の安全性を守る重要な試験です。

なお、密着性試験については、素材やめっき金属、形状によって適用可能な試験方法が限られます。今回ご紹介した試験方法は一部にすぎません。どのような試験が適しているかを詳しく知りたい方は、検査会社にお問い合わせください。

めっきの試験は密着性試験の他にも

めっき製品の試験方法は密着性試験以外にもいくつか存在します。代表的な試験を以下にご紹介しますので、併せてご確認ください。

付着量試験

素材にめっきがどれくらい付着しているかを調べる試験です。対象をめっき前・めっき後で重さを測り、重さの違いから付着量(g/㎡)を算出します。

磁力式厚さ試験

磁力式想定装置(電磁膜厚計)を使用し、製品のめっき皮膜の厚さを測定します。めっきの厚さによって変化する磁気的引力や磁気抵抗から厚さを求めます。

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