ヒートショック試験とは?概要と目的、主な試験方法について

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台所のシンクにお湯を捨てると、「ボコッ」と音がすることがあります。これはシンクの材料のステンレスやアルミニウムが、お湯で温められて膨張したからです。

「温度が上がると体積が増える」「温度が下がると体積が減る」という性質は、自然界のほとんどの物質が持っています。水は水蒸気や氷になり、パンや餅も焼けばふわっと膨らみます。ガラスのコップにお湯を注ぐと割れてしまうのも、ガラスが熱で膨張したからです。

私たちにも身近なこの現象は、自動車の部品や電子部品などでは製品の耐久性に関わる大きな問題になります。今回ご紹介するヒートショック試験(冷熱衝撃試験)は、温度変化による膨張・圧縮に対する耐久性を調べる重要な試験です。

今回は、身近な製品から現代のテクノロジーまで、私たちの生活を支えるヒートショック試験について、詳しく解説していきます。

ヒートショック試験(冷熱衝撃試験)とは?

ヒートショック試験とは、対象物に高温と低温の温度差を繰り返し与え、温度変化に対する耐性を調べる試験です。短時間で一気に熱したり冷ましたりすると、試験片が膨張と収縮を繰り返しクラック(ひび)や破損が発生します。指定の温度変化を繰り返した後の試験片の変化や、破損するまでの時間などをチェックしていきます。

温度変化は高温だと60℃~200℃程度、低温は0℃~-70℃の範囲で変化させます。試験機によっては300℃まで対応できるものもあります。この温度範囲を数分程度で一気に変化させ、試験体にストレスを与えていきます。

材料の多くは、温かくなると膨張し、冷たくなると収縮する性質を持っています。この性質によって材料が歪み、クラック(ひび)や破損が起こります。たとえばガラスの場合、お湯が注がれるとコップの内側は急激に膨張します。一方コップの外側は内側ほど膨張しないため、内側の膨らみ方と外側の膨らみ方に差が出てきます。この膨らみ方の差で生まれるストレスがガラスの強度を上回ると割れてしまいます。

割れたフロントガラス
凍ったフロントガラスにお湯をかけると割れてしまうことも・・・。

熱膨張率や熱伝導率は各材料によって異なるため、さまざまな材料が組み合わさった電子部品などでは膨張率の差が生まれやすくなります。ガラスの内側と外側と同じように、膨張率の差によって材料にストレスがかかります。ストレスが蓄積していくとクラック(ひび)や破損が起こるようになります。

ちなみに、より実環境に近い試験にヒートサイクル試験(温度サイクル試験)があります。こちらはヒートショック試験と比べて温度変化率が緩やかで、使用環境に近い温度変化を与える試験です。温度変化率の違いによってクラックや破損の起こりやすさが変わる場合があるため、得たいデータによってそれぞれの試験を使い分けます。

余談ですが、温度差によるトラブルは人間も起こります。急激な温度変化で血圧が変動すると、失神や心臓・血管の疾患が起こる場合があります。こちらについてもヒートショックと呼ばれており、冬場は特に注意喚起されます。人間に負担がかかるように、金属などの材料でも負担がかかるということです。

ヒートショック試験を実施する目的

ヒートショック試験の目的は、材料や部品の耐久性を把握するためです。ヒートショック試験の対象となる材料や部品は、日常のあらゆる製品で使われています。クラックや破損が起こると、製品によっては重大な事故やクレームにつながる恐れがあります。

たとえば半導体は、炊飯器や洗濯機、冷蔵庫から、スマートフォンやパソコンまで、あらゆるデジタル家電製品に使われています。この他にも自動車の自動運転技術、船舶や航空機の制御システムにも半導体が使われています。これらに使われる部品が故障してしまえば、生活や社会インフラに大きな危険が及びます。ヒートショック試験は、私たちの命や生活を守る重要な試験でもあるのです。

また、製品の性能を保証するために実施する場合もあります。たとえば耐熱ガラスは、耐熱ガラスと名乗るためにJIS規定を満たす必要があります。耐熱温度差が120°C以上400°C未満のものは「耐熱ガラス製器具」、耐熱温度差が400°C以上のものは「超耐熱ガラス製器具」として表示できます。その製品が本当に耐熱性を持っているか、熱に強いかどうかを証明するためにヒートショック試験が実施されます。

ヒートショック試験の対象となる主な素材・製品

ヒートショック試験は、急激な温度変化にさらされる電子部品などで多く実施されます。たとえば自動車のエンジンやモーターの部品、スマートフォンやパソコン、家電製品の部品など、製品の使用時に高温になる製品では特に重要な試験です。

端末機材画像

たとえば電線の接続部分やLED基板、半導体チップの周囲は、電流による急激な温度変化が起こります。そのため、これらに使用する部品は急激な温度変化にも耐えられる強い耐性が求められます。

電子部品の他にも、金属材料やプラスチック、セラミックス、金属やプラスチックが組み合わさった複合材料などでも実施されます。ただし、試験温度領域で化学変化や熱変化を起こし、腐食性ガスや毒性ガスを発生するものは試験できません。

ヒートショック試験の主な試験方法

ヒートショック試験は材料や部品によってさまざまな方法があります。代表的な試験は、高温の液体と低温の液体に交互に浸ける液槽式と、熱風と冷風を交互に当てる気槽式の2つです。耐熱ガラスなどの試験では恒温器に入れて試験します。試験方法はさまざまですが、急激な温度変化を与えるという点で共通しています。

液槽式ヒートショック試験

液槽式ヒートショック試験は、高温と低温の液体に試験体を入れたカゴを交互に浸けて熱衝撃を与える試験です。試験カゴは通常10秒以内で移動していきます。すでに指定の温度に達している液体に浸けるため、気槽式よりも急激な温度変化を与えられます。短時間で結果を得たい場合や、熱衝撃による弱点を見つけるには有効な手段です。

液槽式ヒートショック試験
引用:熱衝撃試験器(液槽式) WINTECH |【東海理機株式会社】静岡の計測器・測定器の販売商社

ただし、市場で実際に起こりうる温度変化よりも急激な変化になるため、実際の使用環境では起こりえない故障が起きてしまう可能性があります。再現性を求める場合は他の試験方法を検討しましょう。また、水分に弱い材料には不向きです。

気槽式ヒートショック試験

気槽式ヒートショック試験は、熱風と冷風を交互に当てる試験です。テストエリアに試験体をセットしたら、上にある高温槽と下にある低温槽から交互に風を送り込みます。上記に加え、周辺の空気を送り込んで常温にさらす場合もあります。

ヒートショック試験装置(ES)

引用:ヒートショック試験装置(ES) | 製品情報 | 株式会社北浜製作所

液槽式に比べると温度変化は穏やかで、試験体は固定するため、より正確なデータを得られます。また、試験体を通電した状態での試験も可能です。前述したヒートサイクル試験(温度サイクル試験)も同じ試験機を使うケースが多いため、気槽式の方が多く採用されています。

耐熱ガラス製食器の熱衝撃試験(JIS S 2030:1979)

ガラスの食器や鍋蓋などのガラス製食器で実施します。一定の恒温器に試験体を置き、30分間保持します。30分経ったらすぐに冷水に1分間浸してひびや割れがないかを調べます。以下の温度差に耐えられればそれぞれの呼称を表示できるようになります。

種類及び呼称 試験温度差 許容差
直火用超耐熱ガラス製 400以上 +20以下
直火用耐熱ガラス製 150以上 +10以下
天火用耐熱ガラス製
(電子レンジ用など)
120以上 + 8以下
熱湯用耐熱ガラス製 120以上 + 8以下

試験体や得たいデータなどによって適した試験方法が異なります。どの試験をどのように活用すべきか、詳しく知りたい方は検査コンサルティング会社にお問い合わせください。

ヒートショック試験は日常と革新を支える重要な試験

ヒートショック試験は、日用品から最先端の製品まで、あらゆる製品に関わる重要な試験です。急激な温度変化にも耐えうる強い素材や部品を生産し、消費者の安心・安全を守ることができます。

ちなみに、ナノテクノロジー産業の現場では、”ゼロ熱膨張材料”が求められ、その研究が進んでいます。精密部品の現場では熱膨張を防ぐための厳密な空調管理が行われています。材料の研究が進み、熱膨張がない材料が登場すれば、管理の手間もなくなり、製品の設計もはるかに容易になります。ヒートショック試験は、精密部品の革新に向けた取り組みを支える試験でもあるのです。

ヒートショック試験は、家電製品からスマートフォン、パソコン、航空機や宇宙開発など、私たちの生活や社会インフラを支える試験です。なお、ヒートショック試験の具体的な内容は材料・部品や得たいデータによってさまざまです。適した試験を実施し、モノの安心と信頼を確保していきましょう。

耐性を調べる試験はヒートショック衝撃試験の他にも

今回ご紹介したヒートショック試験以外にも、素材や部品、製品の耐久性を調べる試験は多くあります。ヒートショック試験を併せて実施が推奨される試験もあるため、ぜひ併せてご確認ください。

温度サイクル試験(ヒートサイクル試験)

本章でもご紹介しましたが、高温と低温の変化を穏やかに与えるのが温度サイクル試験です。実際の温度変化に近い環境を与えられるため、ヒートショック試験と併せて多く実施します。ヒートショック試験を検討されている方は、ヒートサイクル試験についても併せて検討しましょう。

衝撃試験

試験体に急激な負荷をかける試験は様々なものがあります。衝撃試験は試験体を一気に引っ張ったり潰すなどして強度や破損の具合を見ていく試験です。金属やプラスチックなど、あらゆる材料で実施される試験です。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

耐候性試験

耐候性試験は、日光や温湿度、雨や雪などの自然環境による劣化の度合いを調べる試験です。自然光を模した人工光源を照射するなどして試験片が変形・破損するまでの時間や温湿度などを計測します。

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