耐候性試験とは?主な目的や試験の種類・方法について

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街を歩くと、錆びついたガードレールや色あせたポストなどを見かけることがあります。常に太陽光や雨風などにさらされるため、これらの表面に施された塗膜が剥がれていき、サビや色あせ(退色)が見られるようになります。

自動車や土木用機械、橋梁や備蓄タンク、建造物は屋外の環境にも耐えられる高い耐性が求められます。今回ご紹介する耐候性試験は、これらの性能を確かめる上で非常に重要な試験です。

小さな素材から巨大な建造物まで、幅広い範囲で実施される耐候性試験について、この記事で詳しくご紹介していきます。

耐候性試験とは?

耐候性試験は、自然環境が原因の劣化に対する耐性を調べる試験です。材料や製品を実際の太陽光または人工光源に当てて、変色や変形などの具合をチェックしていきます。

耐候性試験とは?

屋外で使用される製品が劣化する原因は、太陽光(紫外線など)、気温差、湿度や降雨による水分、オゾン、沿岸部における塩分などが挙げられます。長く太陽光や雨風などにさらされることによって、製品は少しずつ劣化していきます。そのため耐光性試験を実施し、気象条件によって材料や製品の劣化がどのように進むかを把握する必要があります。

現代の製品は長寿命、メンテナンスフリーが求められます。気象条件に対する劣化しにくさ(耐候性)を把握することは、製品の品質や寿命、材料選びに関わる重要な要素です。

耐候性試験を実施する目的

耐候性試験の目的は、材料や製品の耐性と劣化の仕方を把握することです。製品は屋外で長時間使用すると劣化します。耐候性試験でさまざまな気象条件を擬似的に与えることで、材料や製品の寿命を予測できるようになります。

そして、耐候性試験は私たちの安心・安全の確保にもつながります。もし橋梁や体育館などの大きな建造物の耐久性が把握できていなければ、甚大な事故につながる恐れがあります。試験の結果は、整備・修復・交換などのメンテナンスの目安になります。材料や製品が、どのような気象条件で、どのように劣化するかを確かめることで、私たちの暮らしの安全を守ることができるのです。

耐候性試験の結果は材料の選定にも役立ちます。たとえば、自動車が数日使っただけで塗装がボロボロと剥がれてしまうようでは使い物になりません。自然環境に強い材料や製法を選択できるようになり、より長く快適に利用できる製品を製造できるようになります。

耐候性試験の対象となる主な製品

耐候性試験の対象は非常に広く、あらゆる材料や製品で実施します。材料であれば外壁やガードレールなどに使う塗料、プラスチック、ゴム、繊維などです。屋外で使うものだけではなく、本に使う紙やインクなども対象になります。

耐候性試験の対象となる主な製品

製品についても対象は多岐にわたります。比較的小さなものだと家電製品や衣類、食料品など、大きなものだと自動車や建築物、太陽光パネルなどが対象です。完成された製品で実施することもありますし、それぞれの部品で実施することもあります。自動車などの膨大な部品で構成されている製品については、部品の耐候性を把握しておくことで部品交換などの目安に活用できます。

耐候性試験にはさまざまな種類がある

耐候性試験は主に2種類あります。実際に屋外に置いて劣化を調べる「屋外暴露試験」と、人工光源を使った「促進耐候性試験」です。近年では促進耐候性試験の方が多く実施されていますが、それぞれ一長一短があるため、得たいデータによっては屋外暴露試験も併せて実施する必要があります。

屋外暴露試験

屋外暴露試験

引用:屋外暴露装置 OER-1 スガ試験機 | イプロスものづくり

屋外暴露試験は、対象を実際に屋外にさらして状態の変化を調べる試験です。対象を干物のように長期間干しておくだけのシンプルな試験です。試験場は北海道、アリゾナ、フロリダといった厳しい環境で実施する場合が多いです。

実際の太陽光や雨風にさらすため、使用環境に比較的近い形でデータを取ることができます。ただし、屋外暴露試験の難点は非常に長い期間を要することです。紙やプラスチックなどの製品でも数時間、数日かかり、塗料やゴムなどは数年かかることもあります。たとえば10年後の劣化を確認するためには、実際に10年さらし続けなければいけません。

製品の開発に10年も20年も待てないことも多いですから、近年では後述する促進耐候性試験が多く採用されています。

促進耐候性試験

耐候性試験機

引用:耐候性試験機 | 環境シミュレーションシステム | 岩崎電気

促進耐候性試験は、対象に人工光源からの光を当てたり水をかけたりして状態の変化を確認する試験です。試験対象物を劣化させる環境因子として主要と思われるものを抜粋、整理し光・熱・水の3要素として実施するものが一般的です。

太陽光の数倍・数十倍に及ぶ強い光を照射できます。そのため屋外暴露試験では数年かかる劣化を、促進耐候性試験では数週間に早めることができます。人工光源に加えて、実際の気象条件を想定した結露、温湿度サイクルなどを組み合わせることが可能です。いち早く材料や製品の寿命を予測できるため、スピーディーな製品開発が求められる現代には欠かせない試験です。

ただし、促進耐候性試験はあくまで人工的に気象条件を増幅させたものであるため、屋外暴露試験に比べると精度が劣ります。光についても紫外線、可視光線、赤外線の分布が太陽光と正確に同じではなく光源によっても異なるため、劣化の原因は一般に主として紫外線の影響であるとはいえ、単純に太陽光10年分の強さを1年間で照射したからといって、実際の10年間の劣化とは多少異なります。また、暑い国、寒い国、降雨量の多い国、少ない国、砂漠、雪国、沿岸部などでも劣化の仕方は異なりますので、実際の自然環境に近いデータを得たい場合は屋外暴露試験の方が適しています

耐候性試験は屋外で使う素材・製品には欠かせない試験

耐候性試験は、自動車や建造物、家電製品などあらゆる材料や製品で実施する試験です。紫外線や雨風などにさらされる材料や製品がどのように劣化するかをあらかじめ把握しておくことで、事故の防止や製品の改良などに役立てられています。

ご紹介した2つの試験方法は一長一短があり、得たいデータや使用環境にあわせて選ばれます。自然環境に対する劣化をより早く、より正確に調べるため、試験方法については現在も研究が重ねられています。具体的な試験方法については材料や製品、得たいデータによって異なりますので、試験の実施を検討されている方は検査会社にお問い合わせください。

製品の耐性や寿命を調べる試験は耐候性試験の他にも

耐候性試験のように、対象に負荷をかけて耐性や寿命を調べる試験はさまざまあります。材料や製品の性能を確かめるためにはどれも重要な試験で、中には屋外暴露試験と同じように気が遠くなるような期間を要する試験もあります。

引張試験

対象の両端を一定の速度で引っ張り、変形や破断が起きるまでの強度を調べます。対象の機械的性質を知るための基本的な試験です。

詳しくはこちらの記事でご紹介しています。

曲げ試験

対象の中央を指定の力まで、あるいは破壊するまで曲げて、曲げに対する強さやどのように変形するかをチェックします。対象の強度だけではなく、加工材料の選定にも活用される試験です。

詳細はこちらの記事をご確認ください。

耐食性試験

耐食性試験は対象に塩水や硫化水素ガスなどを噴霧して、腐食(錆び)に対する強さを確かめる試験です。金属めっきなどの塗膜で多く実施されます。

疲労試験

疲労試験は試験片に繰り返し負荷を加えて耐久性を調べる試験です。破断までの回数(繰り返し数)をチェックしていきます。金属材料などの耐久性や寿命を調べる重要な試験で、自動車や航空機の部品など幅広い材料や製品が対象になります。

こちらの記事をご覧ください。

クリープ試験

クリープ試験は対象に一定の負荷を一定時間かけ続ける試験です。一定の温度に加熱した状態で実施することが多いです。破断するまでの温度や時間、時系列データなどを取得できます。非常に長時間実施する試験で、長い条件だと1000時間以上に及ぶこともあります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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