引裂強さ試験とは?主な目的や試験の種類・方法について

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ズボンの股下やお尻の部分が破れてしまったことはありませんか?歩いている時や座ろうとした時に突然ビリッと破れて恥ずかしい思いをした経験がある方もいるかもしれません。

ズボンやリュック、作業着などの衣料品は、着用時や洗濯などでさまざまな負荷がかかります。何らかの理由で生地が傷ついてしまうと、強い力が加わった際に傷ついたところから引き裂かれてしまうことがあります。

今回ご紹介する引裂(ひきさき)強さ試験は、衣料品などの生地の強さを測定する試験です。製品の品質に関わる重要な試験ですので、詳しく解説していきます。

引裂強さ試験とは?

引裂強さ試験は、対象の縦または横方向から引き裂く力を加え、引き裂かれるまでの強度を調べる試験です。

裂けてしまう場所で多いのは、ズボンの後ろポケットや股下、お尻の部分です。たとえば後ろポケットに財布などを入れていると、足を曲げたり座ろうとした際にポケットの縫い目に負荷がかかります。その状態で繰り返し動くことで、やがて縫い目から裂けてしまうのです。引裂強さ試験は、このように想定される使用環境や負荷に応じて実施します。

引裂強さ試験

引裂強さ試験は、試験片に数cmの切り込みを入れて実施することが多いです。お菓子の袋などでは、袋の端の辺りに小さな切り込みが入っていることがあります。切り込みを入れることで、そこから袋を裂きやすいようにしてあります。お菓子の袋では開けやすいようにわざとそうしてありますが、衣料品などの場合、簡単に裂けてしまうようではいけません。傷が付いた状態からどの程度の力まで耐えられるかを確かめることで、生地の強度を確認できるのです。なお、比較のため、切り込みを入れない状態で実施することもあります。

引裂強さ試験を実施する目的

引裂強さ試験は、生地や製品の強度を測定し品質を確かめるために実施します。例えばおろしたてのスーツがすぐに破れてしまえば、クレームになり消費者の信頼を損なう恐れがあります。

引裂強さ試験を実施することで、引き裂きに強い生地を選べるようになります。工事現場などで使われる養生シート (ブルーシート) は、雨風や工具などで少し切れたとしても、なかなか破断しないように丈夫に作られています。また、作業着やスポーツのユニフォームなども同様です。生地の性能は、仕事や競技のパフォーマンスにも影響するため、引裂強さ試験の結果は生地選びの重要な指標になります。

引裂強さ試験
破れにくい強い生地や製品をつくることができれば、消費者の安心・安全を守ることができます。丈夫で長持ちする製品となれば、より多くの消費者が手に取るようになり、優れた製品として評価されるようになります。地道な試験を実施することで、消費者の信頼を得られるようになるのです。

引裂強さ試験の対象となる主な製品

引裂強さ試験は、織物でよく実施する試験です。「鶴の恩返し」でも登場するように、古くから作られてきた製品です。「織物」と聞くとピンとこない方もいるかもしれませんが、シャツやジーンズ、スポーツウェアなど幅広いアイテムが対象になります。

同じような試験内容であっても、求められる強度は生地や製品によって異なります。作業着やスポーツウェア、バイク向けのジャケットやズボンなどはシャツよりも高い引裂き強さが求められることになります。

繊維製品以外にも、ゴムやプラスチック、ダンボールに使われる板紙などでも実施します。具体的な試験方法は対象によって異なりますので、検査会社にお問い合わせいただき、適した試験を実施するようにしましょう。

引裂強さ試験の主な試験方法

引裂強さ試験の試験方法はさまざまありますが、「JIS L 1096織物及び編物の生地試験方法」の中から、よく実施されている試験を2つご紹介します。

JIS L 1096 D法 (ペンジュラム法)

ペンジュラム法

引用:織布エルメンドルフ形引裂度試験機|安田精機製作所

一般的によく用いられるのがD法 (ペンジュラム法) です。

  1. 63mm×約100mmの試験片をたて方向とよこ方向に5枚ずつ (計10枚) 用意します。
  2. 試験片を試験機にセットします。エレメンドルフ試験機という大きな分度器のような振り子がついた試験機がよく使われます。
  3. 試験片の中央に20mmの切り込みを入れたら試験機の振り子を落とします。残り43mmを引き裂いた時の強さ (N:ニュートン) を測定します。

一般的な目安として、ジャケットやデニムなどの外衣類用が10N以上、中衣類用・薄地が7N以上が評価基準となっています。

JIS L 1096 A-1法 (シングルタング法)

シングルタング法

A-1法 (シングルタング法) もよく実施されている試験です。

  1. 長さ約250mm、幅約50mm~100mmの試験片を、たて方向とよこ方向それぞれ用意します。
  2. 試験片の短辺の中央から100mmの切れ目を入れます。引張試験機に、切れ目を入れた片方を上に、もう片方を下に挟んで引き裂く力が加わるようにセットします。
  3. 試験片を取り付けたら、試験を100mm/秒の速度で引っ張り、切れ目から引き裂いていきます。試験片が引き裂かれた時の荷重を記録します。

織物を対象にした試験はこの他にも数多くあります。また、ゴムや板紙などの場合は規格が異なるため試験片の長さや切れ目の長さ、試験片などもそれぞれ異なります。使用環境や得たいデータによって適した試験方法を実施する必要がありますので、詳細は検査会社をお問い合わせください。

繊維製品の強度を調べる引裂強さ試験

ズボンのポケットや股の部分がなかなか破れない理由の1つは、引裂強さ試験を実施し、生地や製法の改良が繰り返されたためです。日常生活のさまざまな動きや習慣に耐えられる丈夫な生地や縫製を選ぶことで、長く快適に使用できる製品を作れるようになります。

もちろん、いくら改良に改良が重ねられたとしても、転んだり雑な扱いがされれば破れてしまうことがあります。衣料品の扱い方は日頃から注意して、大切に使うようにしましょう。

繊維製品の性能を調べる試験は引裂強さ試験の他にも

生地などの性能を調べる試験は数多くあります。「強さ」と一言で言っても、実際にはさまざまな指標があるため、それぞれ適した試験を実施し、強さを確かめる必要があります。

引張試験 (繊維)

切れ目を入れずに、両端から引っ張るのが引張試験です。試験片が破断するまでの強度 (引張強度) を調べます。生地や製品の強度を調べる基本的な試験の1つで、今回ご紹介した引裂強さ試験と併せてよく実施します。

金属やプラスチックでも引張強度は確かめられますが、繊維とは規格が異なります。

はっ水度試験

はっ水度試験は、水を弾く性質を評価する試験です。ジャケットやレインコートや傘、靴などで実施する試験です。はっ水性が高い製品は多少の雨水程度であればしっかり弾いてくれます。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

耐光堅ろう度試験

太陽光による色あせ (変色・退色) の度合いを調べる試験です。太陽光を受けやすい上着や帽子、カーテンやカーペットなどで実施する試験です。JISでは1級から8級まで基準があり、8級が最も堅牢性が高いものとしています。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

摩擦堅ろう度試験

重ね着や洗濯などで衣料品同士が擦れた際の「色移り」の度合いを確かめる試験です。デニムなどの生地の色が、他の生地にどれくらい移ってしまうか、汚染の度合いを調べます。生地に含んだ水分によって色の移り具合が変わるため、乾燥状態と濡れた状態でそれぞれ実施します。1級から5級まであり、5級が最も色移りしにくいものとされます。

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