「会社が電気製品を輸入して国内販売することになった。上司からPSEについて調べるよう言われ、ネットで検索したが内容が難しくて理解できない。」そのような方に、この記事がお役に立つと思います。
多くの電気製品についているPSEマーク。テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、ホットプレート、モバイルバッテリー、ACアダプターなどの電気製品にはPSEマークがありますが、スマホやノートパソコンにはPSEマークがありません。なぜなのでしょうか?
本記事では、
- PSEマークがある製品とない製品の違いは何か?
- 丸形のPSEマークと菱形のPSEマークの違いは何か?
- 海外の電気製品を輸入して国内販売するためにすることは何か?
について初心者の方向けに説明します。
目次
PSEマークがある製品とない製品の違いは何?
PSEマークは、電気用品安全法に定められた手続き等の義務を履行した電気用品に表示されるマークです。しかし、私たちがいつも使っている電気製品でもPSEマークがない製品が多数あります。
例えば、スマホ、ノートパソコン、ハンディファンなどです。同じ掃除機でもコードレス掃除器にはPSEマークがありませんが、コード付きの掃除機にはPSEマークがあります。コードがついていないハンディファンにはPSEマークがなく、コード付きの扇風機にはPSEマークがあります。
違いが見えてきたでしょうか?
PSEマーク有り無しの違いは、ACコンセントに挿して使う製品かそうではないかです。
ノートパソコンやスマホは、そのままACコンセントに挿さないのでPSEマークがありません。代わりにノートパソコンを充電するためのACアダプターは、ACコンセントに挿すのでPSEマークがあります。
同様に、ACコンセントに挿さない充電式ハンディファンにはPSEマークはなく、ACコンセントに挿して使う扇風機にはPSEマークがあります。また、USB電源を使う製品についてもACコンセントには挿さないためPSEマークがありません。
しかし、例外もあります。その一つがモバイルバッテリーです。
モバイルバッテリーの中でも内蔵されるリチウムイオン電池の体積エネルギー密度が高い製品にはPSEマークがあります。
上記をまとめると、次のようになります。
【PSEマークがある製品】
・ACコンセントに挿して使う製品
・モバイルバッテリー(内蔵のリチウムイオン電池の体積エネルギー密度が高い製品)
【PSEマークがない製品】
・ACコンセントに挿したACアダプターを介して使う製品
・USB電源で使う製品
・乾電池で使う製品
・モバイルバッテリー(内蔵のリチウムイオン電池の体積エネルギー密度が低い製品)
丸形のPSEマークと菱形のPSEマークの違いは何?
いつも使っている電気製品の大半は丸形のPSEマークです。テレビや冷蔵庫、電子レンジなどは丸型のPSEマークがあります。一方、菱形のPSEマークがある製品は、パソコンのACアダプター、スマホの充電に使っているACアダプター、電源タップや三又コンセントなどが身近な製品例です。
また、ガソリンなどを燃料として使用する携帯発電機も菱形のPSEマークです。
菱形のPSEマークがある製品は、電気用品安全法に「構造又は使用方法その他の使用状況からみて特に危険又は障害の発生するおそれが多い電気用品」と定義されています。
電気製品を輸入して国内販売するためにすること
まず、輸入する電気製品がPSEマークに該当する製品かどうかを調査します。PSEマークに該当しない製品の例としてUSB駆動の製品があります。なお、前述したようにPSEマークには菱形と丸形のマークがありますが、その大半は丸形のPSEマーク対象製品です。
今回は丸形のPSEマーク対象製品の輸入について説明をしようと思います。
- 経済産業局に事業届けをする。
会社がある地域を管轄する経済産業局に事業届けを行ってください。 - 技術基準に適合していることを確認する。
製品毎に安全性に関する技術基準があり、それに適合することを確認する必要があります。自社に電気検査設備のない場合は検査会社等に検査を依頼することになります。検査会社は登録検査機関である必要はありません。 - 自主検査を実施して検査記録を保存する。
全数検査を行い、検査記録を3年間保存します。 - PSEマーク等を表示する。
製品によって表示すべき事項が異なります。
なお、電源電圧やコンセントプラグ等は海外仕様のままでは日本では使えません。日本用に電源電圧やコンセントプラグ等の仕様を変更する必要があります。
輸入する電気製品にACアダプターを同梱する場合
ACアダプターは菱形のPSEマーク対象製品なので、上記の丸形のPSEマーク対象製品の場合に追加して「適合性検査」が必要になります。「適合性検査」は登録検査機関での検査が必要です。
同梱するACアダプターにPSEマークが既にある場合
登録検査機関に「適合性検査」を依頼すると費用がかかります。検査費用を節約する為に、PSE適合済みのACアダプターを流用する場合は、ACアダプターの輸入業者から下記の書類を入手して確認する必要があります。
- 電気用品輸入事業届書
- 適合性検査証明書(製品によって有効期限が異なります。)
- 適合性検査報告書
- 自主検査記録
同梱するACアダプターは、輸入する電気製品の種類に適合している必要があります。
例えば、適用試験規格J61558-2-16(スイッチモード電源装置)のACアダプターは、DVDプレーヤーのACアダプターとしては不適になります。
以下は多少難しい話になります。わからない場合はコンサルテイング会社に相談するのが良いかと思います。
リチウムイオン電池内蔵製品を輸入する場合
USB電源で充電するリチウムイオン電池内蔵製品を輸入する場合は、PSEマークに該当しません。
しかし、PSEマークに該当しない製品だから何の検査も行わないというわけにはいきません。検査をしないと、後でとんでもない事態に陥る可能性があります。
実際に充電式ハンディファンやリチウムイオンバッテリーでは発熱・発火による事故が増えています。リチウムイオン電池内蔵製品は危険を孕んでいるので、過充電防止回路、過放電防止回路、過電流防止回路などの保護回路が適切かどうか検査する必要があります。
※リチウムイオン電池内蔵製品の危険性についてはこちらの記事をご覧ください。
輸入業者が輸入した電気製品を販売する場合
販売業者の義務はPSEマーク等の表示が適切になされていることの確認ですが、千差万別の輸入業者の言うことを鵜呑みにしてはダメです。違反があった場合の罰則は販売業者にも及びます。輸入業者から下記の書類を入手して確認する必要があります。
- 電気用品輸入事業届書
- 技術基準適合性検査報告書
- 適合性検査証明書(菱形のPSEマーク対象製品の場合)
- 自主検査記録
電気製品が原因の危険から消費者を守るPSEマーク
ここまで、PSEマークの概略を説明させていただきました。
詳しい内容や手続きの流れ等については下記の経済産業省のWebサイトをご確認ください。なお、今回の内容についてご不明点やお困りごとをお持ちの方はコンサルティング会社に相談することをおすすめします。本記事がPSEマークについて理解を深める手助けになれば幸いです。
電気用品安全法の概要 – 電気用品安全法(METI/経済産業省)