買ったばかりの製品に傷が入っていたり、すぐに壊れてしまったら、どう思いますか?悲しくなったり、イライラしてクレームを入れたくなるでしょうか?・・・少なくとも、良い気持ちはしないはずです。
ものづくりにおいて、製品や部品の品質や傷・汚れなどのチェックは欠かせません。不良品が消費者に届いてしまえば企業の信用を損なうだけでなく、消費者に危険が及ぶ恐れもあるからです。
品質検査は、私たちが使用する製品の安全性・信頼性をチェックする大切な検査です。この記事では品質検査の役割や目的、主な検査方法についてご紹介していきます。
目次
品質検査をするべき理由
品質検査を実施する大きな理由が、「品質を担保し、顧客の信頼を得ること」です。
そもそも品質検査は、「品質管理」という大きな枠組みの中にある手法の1つです。工程管理や品質改善といった、商品やサービスの品質を向上させようとする一連の取り組みの中に品質検査が含まれています。「試験を実施して終わり」では意味がありません。試験の結果を踏まえて顧客の信頼獲得のために行動する必要があります。
品質管理を怠ると製品ごとに品質が異なったり、不良品が発生しやすくなる恐れがあります。もし不良品が流通されてしまえば顧客からの信用を落とすことになります。クレームはSNSや口コミサイトで発信できる時代ですから、ブランド価値を落とす直接の要因になりかねません。不良品が出ればその分返品や返金、回収などのリスクや手間も増えてしまいます。メーカーや販売業者の信頼を確保するためにも、品質検査は欠かせません。
製品完成後だけでなく、製造工程で細かく検査を実施すると、不良品の発生原因を特定しやすくなります。完成後のみで検査をし不良品が出た場合、どこでミスが発生しているのか全行程を1つずつ調べ上げなければなりません。一方、製造プロセスで検査を実施することで、どの工程で発生しやすいのかが明確になるため、具体的な再発防止対策を取りやすくなります。細かく品質検査を実施することで効率よく改善できるようになるため、より良いものづくりを実現できます。品質が向上し安定するようになればクレームなどの手間も減り、売上にも影響していきます。
品質検査は大きく分けて4種類
品質検査は製造プロセスにあわせて実施でき、大きく分類すると以下の4種類に分けられます。
- 受入検査
- 工程検査
- 最終検査
- 出荷検査
- 染色堅ろう度試験 (摩擦・色泣き・耐光性・耐ドライクリーニングなど)
- 抗菌性試験 (JIS L 1902)
- 引張試験 (JIS L 1096)
- 撥水性試験 (JIS L 1092)
- 抗菌性試験 (JIS Z 2801)
- 食品衛生法に基づく試験 (材質試験・溶出試験など)
- 抗ウイルス性 (ISO 21702)
- 耐熱性試験 (JIS S 2029)
- 耐食性試験
- コーンカロリーメータによる発熱性試験
- 衝撃吸収材や人工芝などの耐衝撃性 (衝撃吸収性)
- 帯電性試験 (床・敷物)
- 燃焼性試験 (難燃性・防炎性)
- 壁紙のホルムアルデヒド放散量
- VOC (揮発性有機化合物)測定
「どのタイミングで検査されるか?」によって分かれていると捉えてください。
この後も検査の種類や試験方法が分岐していきますので、少しずつ覚えていきましょう。
主な実施内容を後述していきます。
1.受入検査
製造する前に実施するのが受入検査です。購入した原材料や部品などを検査して、製造に適した品質かどうかをチェックします。基本的には目視や測定機器などで検査されます。
2.工程検査
製造過程でも検査が実施されます。ある工程から次の工程に移行する際に、加工された部品や組み立てられた品物などを検査していきます。製造→検査→製造→検査・・・と細かく検査をすると不良品の発生原因を特定しやすくなり、品質が向上しやすくなります。その分、検査の費用や検査にかかる労働力が増えるため、実際には製品1つにかけられる予算や想定されるリスクとの兼ね合いで判断されます。
3.最終検査
おそらく多くの方がイメージするのがこちらの最終検査でしょう。出来上がった製品が、定められた安全基準に満たしているかどうかの可否が判断されます。
前述のとおり、検査の目的は「適合・不適合」をチェックするだけでなく、品質を確保し根本的な不良の流出を防ぐためです。どの製品に問題があるのか隈なくチェックし、不良品の発生の軽減や流出防止を計っていきます。最終検査を適切に行うことによって、クライアントや顧客の信用を確保することができます。
4.出荷検査
最終検査の後でも、出荷の直前にもう一度検査する場合があります。完成した段階では安全基準を満たしていたとしても、梱包や運搬、保管期間中に何らかの理由で劣化する可能性もあります。そのため、出荷検査を実施し安全基準を問題なく確保できているか確認されるのです。
検査の実施内容に応じてさらに分類
各工程で検査が実施されますが、それを「どのくらい実施するか」でさらに種類が分かれていきます。一部を選んで行うのか、すべて検査するのか、あるいは省略するかです。詳しく見ていきましょう。
抜き取り検査(受入・工程・最終・出荷)
抜き取り検査はその名の通り、ロットから一部を抜き取って実施する検査方法です。ネジやボルトなどの安価で数が多い製品や、検査によって製品の価値が失われてしまうものは抜き取り検査が実施されます。
たとえば、電球の寿命試験では、電球がつかなくなるまで使い続けます。これをすべての製品で実施すれば、店頭には壊れて使えない電球が並ぶことになるため、一部を抜き取って検査を行います。この他にも製品の強さを調べる引張試験や耐えられる温度を調べる耐熱性試験など、製品が劣化したり破壊されるまで実施される試験では抜き取り検査が実施されます。
全数検査(受入・工程・最終・出荷)
対象をすべてもれなく検査するのが全数検査です。自動車のブレーキや医療機器、電気用品など、不具合で大きな被害が出る可能性があるものについては全数検査が行われます。
たとえば食品製造においては、安価なものであっても全数検査が行われることが多いです。食品にX線異物検査機や金属探知機などを通して異物が混入していないかチェックされます。もし食品に異物が混入していると、全回収やクレーム、場合によっては食中毒などの一大事になる恐れがあります。このように、全数検査を実施するコストよりも、異物が入っていた場合のリスクの方が大きいものは全数検査が実施されます。
間接検査(受入)
受入検査においては間接検査が採用されることもあります。間接検査は仕入先の業者が作成した検査成績書を確認して受入検査を省略する検査です。仕入先の検査が信頼できる場合は、受入検査の一部を省略することができます。
無試験検査(工程)
無試験検査とは、品質情報や技術情報などに基づきサンプルの試験を省略する検査です。技術や実績から不適合品の発生がほとんど出ず、次の工程や顧客に影響が出ないと判断される場合に採用される試験です。検査を省略し、書類などでロットの合否を判断していきます。
検査項目に応じて試験方法も多数
前章までは、どの工程で、どのくらい検査を実施するかをお伝えしてきました。ここからは「適合・不適合」「合格・不合格」を判断するために、「どのような」試験が行われるかを確認していきます。検査の項目に応じて、試験方法の種類は多種多様となっています。
試験方法は膨大にあるためこの記事では紹介しきれませんので、ここではいくつかの製品を例にあげて試験方法を列挙していきます。
1.衣料品で実施される主な試験
衣料品には上記を含むさまざまな試験があります。染色堅ろう度試験は色落ちなどがしないかどうか、引張試験は生地の引っ張りに対する強度を調べる試験です。コートや傘など雨風にさらされやすい製品では撥水性試験が実施されます。実施される試験については、確認したい検査項目や予算、衣料品の種類に応じて選んでいきます。たとえば半導体工場の作業服は静電気を抑制する繊維が含まれているので、帯電性試験を行い繊維の性能を確認します。また、同じ引張試験であっても、普段着と消防士が着用する防火服では求められる安全基準が異なります。
2.台所用品で実施される主な試験
台所用品は耐熱などの耐久性の試験に加えて、製品に「鉛」や「カドミウム」などの有害な物質が溶け出したりしないかを確認します。プラスチックの容器や食器などは、電子レンジを活用した高周波適正試験や家庭用食洗機の繰り返し試験などが実施されます。
3.建築材料で実施される主な試験
建材については材質の強さや安全性が確かめられます。地震・火災・台風などの災害に強いか、気候や使用条件などに対してどれくらい耐えられるかを検査していきます。時代の変化や顧客のニーズに応じて求められる安全基準や検査も変化します。
ここでご紹介した検査項目は、あくまで一部に過ぎません。実際には、製品によって必要な検査項目も試験方法も異なります。
様々な品質検査によって製品の安全性・信頼性が保証されます
ここまで、品質検査の流れや目的・検査方法の種類についてご説明させていただきました。検査や試験の種類をたくさんご紹介しましたので少々困惑された方もいるかもしれません。基本的には「どのタイミングで」「どのような試験を」「どのくらい実施するか」によって分類されていますので、再度ゆっくり読み返しながら理解を深めていただければと思います。
検査や試験の種類が多いということは、それだけ多くの尺度から安全基準が確かめられているということでもあります。さまざまな検査に合格し、安全基準に満たした製品が流通することで、私たちは安心して生活できるのです。製品の均質化(コモディティ化)が進む昨今では、安全性・信頼性の保証は必要不可欠です。
品質検査について詳しく知りたい方、開発されている製品の安全性・信頼性を確かめたい事業者の方は、ぜひ検査会社にお問い合わせください。