耐光堅ろう度試験とは?主な種類や試験方法をわかりやすく解説

服・シューズ・バッグ

衣類を外に干していたら、黄色っぽく色あせてしまった経験はありませんか?
天気の良い日に洗濯物を干せばカラッとよく乾きますし、生乾きのニオイもしません。ただし、太陽の光を長く浴びてしまうと、衣類にダメージを与えてしまう恐れがあります。製品がどのような光に対し、どのくらい強いかは、今回ご説明する「耐光堅ろう度試験」で確かめられます。衣類の品質にも影響する大事な試験です。

この記事では耐光堅ろう度試験の概要や主な種類、試験方法についてご説明していきます。

耐光堅ろう度試験とは?実施される主な製品

耐光堅ろう度試験とは、染色された繊維製品を対象に、光の作用による「変色・退色の程度」を調べるために行う試験です。

私たちが日頃着用している衣類は、さまざまな光を浴びています。太陽の光をはじめとして、職場の蛍光灯やアパレルショップの光など、あらゆる光にさらされています。例えば店頭に並んだ商品が日に日に色あせてしまうようでは売り物になりません。耐光堅ろう度試験は、こうした光による変色・退色の度合いを確かめる試験です。強さを示すレベルは1級から8級まであり、8級が最も強いレベルになります。試験においては3級照射と4級照射が多く実施されています。

耐光堅ろう度

繊維製品の中でも特に強い耐光性が求められるのはカーテンです。カーテンは、外からの視線を遮るためだけではなく、冷暖房の効率化 (保温) や外からの光を抑える (調光・遮光) 役割があります。近年ではUV (紫外線) カット機能を持つものもあり、光に対する抵抗性が求められる製品です。日本では、カーテンの耐光堅ろう度は4級以上が求められるとJISで定められています。ちなみに、カーテンについては耐光性と併せて遮光性 (光を遮る度合い) もチェックされます。遮光率が大きいものほど光を遮る性能が高いとされ、製品選びのポイントになっています。カーテンの他にも、上着やパンツなどの外装でよく実施される試験です。
少々脱線しましたが、耐光堅ろう度試験の実施によって繊維製品の性能を判断でき、消費者の要望に応えることができます。消費者が製品を快適に使用できるようにするためにも、耐光堅ろう度試験は大切な試験と言えます。

耐光堅ろう度試験の主な種類と実施方法

耐光堅ろう度試験は、使用する光の種類によって分けられます。主に紫外線を照射するカーボンアーク灯光 (JIS L 0842) と、太陽光に近い光を照射するキセノンアーク灯光 (JIS L 0843) の2種類が一般的です。試験機を使用すると、太陽光の数倍の光を照射できるため、実際の使用環境よりも短期間で耐光性を把握できます。
なお、試験では試験片と一緒に「ブルースケール」という標準布を用意します。標準物との比較によって試験片の耐光性を数値化しやすくなります。ブルースケールには1級から8級まであり、数値が大きいほど耐光性が強いと判断できます。

カーボンアーク灯光 (JIS L 0842)

試験方法は5種類ありますが、この記事ではよく実施されている第3露光法についてご紹介します。
対象となる試験片とブルースケールを試験片ホルダに取り付け、半分を覆い光が当たる箇所と当たらない箇所を作り、変退色の具合を見比べていきます。
試験片とブルースケールを試験機に取り付けたら、ブルースケールが標準の色差に退色するまで光を当てていきます。照射後、試験片を取り出し、2時間以上暗所に保管しその後、光が当たっていた箇所と当たっていない箇所の色の差を、ブルースケールと比較します。3級試験においては3級ブルースケールを使用し、4級試験においては4級ブルースケールを使用します。照射時間は試験機によって異なりますが、JISでは3級は6時間程度、4級は20時間程度です。

カーボンアーク灯光

キセノンアーク灯光 (JIS L 0843)

詳細な試験内容は、上述したカーボンアーク灯光 (JIS L 0842) と同様です。太陽光の波長に近く、試験方法はカーボンアーク灯光のものと大きく変わりません。カーボンアーク灯光と同様、太陽光の数倍に及ぶ強い光を照射でき、自然光よりも早く結果を把握できます。ただし、あくまで太陽光を人工的に増幅させたものであるため、実際の使用環境での変退色の度合いとは異なります。

光による色あせ (日焼け) の度合いを測る耐光堅ろう度試験

耐光堅ろう度試験は、繊維製品の光に対する丈夫さを確かめる重要な試験です。カーテンや上着、帽子など、日頃太陽光を浴びやすい製品は特に高い性能が求められます。製品を長く快適に使っていただくためにも、耐光堅ろう度試験の実施は欠かせません。
試験で得られるデータはクレーム防止や品質向上などに役立ちます。消費者の安心と安全を確保するためにも、それぞれの製品に適した試験を実施しましょう。具体的な試験方法については材料や製品、得たいデータによって異なりますので、試験の実施を検討されている方は検査会社にお問い合わせください。

生地の堅ろう度を調べる試験はこの他にも

耐光堅ろう度試験の他にも生地の堅ろう度を調べる方法はさまざまあります。製品の利用シーンや目的に合わせた試験を実施し、生地の変色や退色、白布への色移りなどをチェックしていきます。

摩擦堅ろう度試験


摩擦堅ろう度試験は、着用や洗濯などによる摩擦の影響で色移りする恐れがないかを確かめる試験です。乾いた白綿布で擦る乾燥試験と、濡れた白綿布で擦る湿潤試験の2種類があります。

水堅ろう度試験

水堅ろう度試験は、生地が水に濡れた際に起こる変退色や他の生地への色移りなどをチェックする試験です。対象の布に白布を縫い付け水に浸し、プラスチック板に挟みます。その後、乾燥機で乾燥させて生地の変色や白布への色移りの度合いを確かめます。
よく実施されるのは靴の生地です。靴は雨などによって濡れやすいため、履いている靴下に生地の色が移ってしまわないか確かめられます。靴の内側の生地から、淡色系の靴下にどれくらい色移りするのかを評価します。

色泣き試験

衣類が雨などに濡れると、衣類に施された染料が白色部分や淡色部分に移ってしまう場合があります。染料が移動して色が泣いているように見えることから「色泣き」またはブリードと呼びます。濃淡のある製品で起こりやすい現象です。濃い部分から淡い部分に移るとよく目立ちます。
試験方法は、薄めた界面活性剤 (洗剤) に試験片の下端を浸し、洗剤の液を吸い上げる形で一定時間置きます。試験片を乾燥させたら色泣きの度合いを判定します。試験片の作成については試験の対象が柄物か無地物であるかによって異なります。

窒素酸化物堅ろう度試験

窒素酸化物堅ろう度試験は、その名の通り窒素酸化物による変退色の度合いを調べる試験です。窒素酸化物は自動車の排気ガスや石油ストーブ、ガスコンロなどから発生するガスで、衣類が長時間触れ続けると染料が変色する場合があります。試験によって窒素酸化物でどれくらい変退色が見られるかを事前に把握できます。

試験布と標準染色布 (変退色の程度を見るために用いる布) を同じ容器に入れ、窒素酸化物を注入します。標準染色布が規定の段階まで変退色したところでストップして試験布の変退色の度合いを判定します。

品質検査でお悩みの方はこちら

日本ラボテックバナー

関連記事

TOP